患者会運営tips

マネタイズの巻

マネタイズの巻

NPOつまり非営利活動において、どのように活動資金を確保するかは重要である一方で、分野によっては方法が確立されていないように感じる。

僕はがん患者会やそれに関連する活動を約2年間行ってきたが、患者会運営を始めるまではボランティアや社会貢献の類に関わったことはほぼなく、ここまで身銭を切って活動しているとは全く想像していなかった。

基本的に収益性が低く公共性の高い事業は税金によって維持されるが、一般に課題として認識されていないものはNPOのような草の根的な活動によって支えられている。

今でこそネットで繋がることで、寄付やクラウドファンディングなどから活動資金を集めやすくはなっている。しかし、これらも認知度や実績がない場合は注目を集めにくく、立ち上げ初期から理想の金額を集めるのは難しい。

もちろん通常のビジネスでも顧客に広まりサービスや物が売れるまでに時間がかかるものだし、黒字化するまでは融資(借金)や貯金で乗り切ることになるが、これは将来的に収益化可能なことを念頭に置いた動きである。

NPOが活動する領域はそこまでの収益が望めるビジネスモデルを作りにくいが故にNPOが存在しており、少し考えて上手くいくモデルがあるならばどこかの民間企業が既にサービスを提供しているのである。

患者会を始めた当初、患者会やそれに付随する事業だけで収益化し、運営することを考えていた。というかそれができると思っていた。寄付やクラウドファンディングなどの手段は知っているし、困っている人の為の活動なら企業からの支援は容易に得られると高を括っていた。

正確に言っておくと、ここでの運営とは仕事に見合った活動費や給料を出して人を育てながら経営をする、という意味である。

たまに、2年間患者会をやってきて「頑張って続けている感」を覚える瞬間もあるのだが、残念ながらこの目的の達成には1ミリも届いていない。

そんな僕が考える現状と新しく活動を始める患者会はマネタイズの為に何ができるかについてつらつらと書いていく。

患者団体のマネタイズが難しい理由

患者会に携わっている人は口を揃えたように「患者さんからはお金は取れない」と言う。気持ちはよく分かる。それなら他から代わりにお金を取るという方向に行けばいいのだが、中々そうはなっていない。

特に院内の患者会はその傾向が強いように思える。院内よりも広域(地域単位やオンライン)で活動している組織は何かしらの形で金銭的支援を集めているイメージがある。

がんに罹患するのはシニア層が多いため、ある程度お金や時間に余裕のある世代は、そこまで金銭的なインセンティブがなくても患者会を継続できるケースが多いのだろう。

また、助成金を貰うにしても申請が手間な割に額もそれだけでは十分な程にはならず、毎年継続的にもらえる保証はどこにもない。

そして、あの手この手と策を考えるよりも普通に仕事をして、手弁当で“頑張った”方が手っ取り早い。という結論に至るのだ。

また、基本的に患者会は無料であるという常識が出来上がってしまった今、有料化する会が出てきても人は集まりにくいだろうし、そもそも参加費のみで運営しようとしても不十分だろう。

つまり最もシンプルな方法が採用できない(採用に心理的な抵抗がある)場合、誰もが患者会のような活動のみで持続可能な運営をすることは困難なのだと思う。

目的と必要な資金

マネタイズをすると言っても、組織として何をやりたくてそれを実行するのにいくら必要なのかを明確にする必要がある。

資金の面で患者会活動に人生を賭けて生計を立てることを目指すのか、副業としてやるのか、趣味としてやるのか。

この目的は個人や組織によって違うものであり、参加者や周囲の人が嫌な思いをしないならば形はなんでも良いと思う。

そもそも患者会的活動のゴール設定は難しい。新しい患者は増えていく、病気の人自体を減らすことは医師をはじめとする医療者や研究の仕事である。

話す場としての受け皿的機能を維持することを目的とするのが今の所ゴールではあるが、ボランティアだけで運営していけば組織は疲弊していくだろう。

患者会マネタイズの巻

具体的にどのようなマネタイズ手段があるかや、患者会という形態にマッチしやすいものとその特徴をまとめる。

1.寄付

寄付というと駅前でプレートを持つ人たちをイメージするだろうか。人を使って時間と労力をかけて呼びかけるのはあまり効率が良いとは言えない。

今はネットでの寄付が使い勝手が良い。ネット寄付のプラットフォームはコングラントやシンカブルなどいくつかある。これらのプラットフォームで団体のページさえ作ってしまえば、家でスマホ片手にゴロゴロしている人に寄付をしてもらうことだってできる。

無論ただ単に寄付のURLを貼るだけではほぼ誰も見向きもしないので、訴求文を書く必要はあるし、当たり前だがプラットフォームに手数料を取られる。

僕らのような弱小団体だと月に寄付が一件あるかないかということも少なくなく(本当にありがたい!)、そのような場合は手元に入る金額より手数料の方が高くつくことになる。

手数料回避の為に個人のQR決済を使用するという方法も考えられるが、これはグレーゾーン。

寄付は本人がどれだけ知っている人にアピールできるかにかかっているというのが実感である。信頼を築くことを目的に行動するのは気持ち悪いが、結果的に一人一人と信頼を築けるような振る舞いをした結果が寄付に繋がるのだと思う。

パッと見で良いことをやっているからと言って全く知らない人から寄付をいただけることは滅多にない。

月額で寄付をもらう形式もある。

2.クラウドファンディング

ここ数年でかなり広まった方法。これもいかに関係人口を増やせるかがキーである。短期間で行う寄付みたいな印象。

寄付の性質に加え、リターンの魅力度やそのプロジェクトがどれだけ面白いか、訴求文にどれだけ心が動かされるかがキーとなる。

リターンを価値のあるものにすることができれば良いが、患者会だと中々差別化にしくい印象。

リターンとしては物として(データではない)冊子を送る、限定で講師を招いたセミナーイベントを開く、出張で講演をする、協力者として名前をWebサイトや冊子に掲載するなどなど。

寄付のマンスリーサポーターの特典と似た感じ。

3.会員制度

会費をもらって組織を運営するやり方。クラウドファンディングと同様に魅力的な会員限定のコンテンツを作ることができれば安定した運営基盤に。

多いのは会員限定の会報誌を送ったりやイベントを企画したりするもの。

エマリモでもやりたい。コンテンツメーカーと会員を管理する人、求ム。

4.財団や基金からの助成金

患者会と相性は良いと思う。ただ、個人よりは組織向け。ある程度の実績が必要。書類作成をする必要がある。

使用用途が限定されている場合もある。

樋口宗孝がん研究基金様は大変ありがたいことに実績があまりない段階でも助成をくださったので、若年層のがん患者向けに何かやりたい人は検討してみては。

5.noteを売る

有料記事を作ることができる。また、投げ銭形式にもできるので文章を書くのが好きな方にはうってつけ。

導入として一部を公開することができるので、タイトルと導入の主語を大きくして流入を増やしてマガジンスタイルで月額いくらいただく、みたいなスタイルの人はうまくいっていそう。

拡散がものを言うのでTwitterのフォロワーがある程度必要。InstagramよりはTwitter(文字)とnote(文字)の方が相性は良さげ。

6.商品を売る

チャリティーグッズなどを作る。baseやshopifyを使えば準備は簡単にできると思うが、たくさん販売するのは難易度高い気がする。デザインや物品の仕入れ発注に時間を取られるので、ある程度の量が捌けるルートがあるなら良いかも。

7.企業からの助成

企業との利害が一致した上で、信頼関係を築くことが必要。つても何もない状況だと多分これが一番難易度高い印象。企業は基本的に自社の強みを活かして課題を解決する方向にモチベーションがある。

企業は営利目的なので、その助成や寄付が何らかの利益に繋がらないといけない。最近はESG投資やらダイバーシティやら言われているので、その辺活路がありそう。

あとはひたすら営業。

マネタイズ方法まとめ

組織の規模とどのくらいの費用が必要かにもよるが、ここに上げた方法一つだけで運営していくのではなく、なるべく複数の手段を用意するのが望ましい。

1.2.3.5.6.は「どれだけ多くの人の目に留まり活動の趣旨を知ってもらうか」が重要なので、SNSのフォロワーを増やすことは最善手だろう。

結局は起業と同じ…?

フリーランスとして仕事を得るにしても、オンラインサロンで会員を増やすにしてもある程度市場を読んで労力と時間を投下しないと形にはならない。

これらと同様に患者会や支援活動に関しても、組織としてしっかりと運営をするならば独立や起業と同じように、全力で取り組まない限り理想とする結果を得るのは難しそう、ということがこの2年間で分かってきたことだ。

ただスポ根マインドが必要というよりかは、自分達が動かなくても良いようなコンテンツの制作や、どこに時間と労力を割くのかといった戦略を立てることが必要だと思う。

NPOの活動はお金が目的ではないが、お金がないと何もできない。

単発でボランティアをすることは比較的簡単だが、継続して活動し続けるのは難しい。

このような活動だからこそ、持続可能な運営の仕組みを作る必要がある。

ABOUT ME
akky
悪性リンパ腫になって骨髄移植をしました。emaremo代表。甘党。漫画はONE PIECEとSKET DANCEが好きです。
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