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血液がん患者は焦り過ぎているのかもしれない

血液がん患者は焦り過ぎているのかもしれない

私が血液内科に入院していたとき、院内の患者会でこんなことを尋ねた。

「移植したあと、どのくらいのタイミングで社会復帰できますかね~」

すると、その会の世話人の方はこのように言った。

「自分の場合は半年くらいで復職したけど、みんなそれぞれのタイミングがある。あんまり焦って体調崩して再入院しても仕方ないと思うよ。今思えば1年くらいゆっくりしてても良かったな。」

結局私は移植後半年で復学し、その半年後には週7で研究室に足を運んでいた。

今思えば確かにそこまで焦って復学しなくても良かったし、そこまで追い込んで研究しなくても良かった。

世話人の方は退院後に焦って無理をしてしまう人を何人も見てきたのだろう。

でも当時の私はそうしないといられなかった。

長期入院していると、社会と隔絶され自分だけ取り残されているように感じる。

そして周囲はそんなこと関係なく人生を進めていて、全て順調にいっているように見える。

とてつもなく大きく見える「遅れ」を取り戻すべく、退院してからできるだけ早く、しかも以前よりもハイペースで走らないといけない。そんな気がしてしまったのだ。

ウサギとカメ

そもそも、入院や治療は立ち止まっている状態なのだろうか。本当に遅れは存在するのか。

仕事や学業を一つの「コース」として捉えれば、休んでいる期間は減速もしくは停止していると言える。

しかし、そのコースは他人が作ったものであって、多くの人が感じる競争は生産性の為に他人が作り出したものなのである。

競争そのものが好きな人は競争すれば良いと思うが、そうでない人は何か目的があってそのコースに立っているはずだ。

その目的に一度立ち返ってみる。

一見立ち止まっているように見えるが、心の中は目まぐるしく動いていて、何が大切で何をしたいのかを明確にする期間になりうる。

治療や療養期間は決して立ち止まっているのではなく、ゆっくりではあるが歩みを進めている時間とも言えるのではないか。

マリオカート的

次に、スピードを上げることが最善手なのだろうか。

社会復帰が見えてきたタイミングで焦るのは何故か。

理由の1つとして、スピードアップして進まないと元の自分の成長スピードに追い付けないと思ってしまう。ということが考えられる。

でもそれではどこかで息切れしてしまう。

じゃあ諦めるか。

もし諦められるのならば、きっとその空いたスペースで何か新しいことができると思う。上手く切り替えができることは幸せの総量を増やしてくれる。

諦められない人はどうするか。

以前と同じ道を辿り、スピードを上げて追い付こうとするのは、恐らく一般的に最善手ではない。

マリオカートでショートカットやアイテムを使えば良いタイムを出せるのと同じように、目標達成のためにより良い方法を探すことが、まず最初にやるべきことである。

盲目的に「今出せる最大パワーで頑張る」という精神論だけを持ち出すのではなく、「今の自分にとって合理的かつ効率的な方法は何か」という方向性を腰を据えて考えた方が幾分頭の中はすっきりする。(と個人的には思う。)

これも時間が経っているから言えることなのかもしれない

もし私が移植する前や移植直後に同じことを言われて、すんなりと受け入れたかどうかは分からない。

いや、分からないなんてお茶を濁してしまったが、きっと聞く耳なんか持たなかっただろうし、むしろ「治療が終わったお気楽な立場から偉そうに言いやがって!」と思うに違いない。

だからこそ、焦ってこんなサイトを作って、こんな文章を書いているのだろう。

ABOUT ME
akky
悪性リンパ腫になって骨髄移植をしました。emaremo代表。甘党。漫画はONE PIECEとSKET DANCEが好きです。
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